再生医療
~PRP療法・APS療法・SC-CM療法~
多血小板血漿(PRP)療法・
自己タンパク質溶液(APS)療法
多血小板血漿(PRP)療法のご案内
当院は、再生医療等の安全性の確保等に関する法律第40条第1項の規定に則って、特定細胞加工物製造届出を行い、細胞培養加工施設としての認可を受けております(細胞培養加工施設番号FC3180041)。
また、同法に則った第三種再生医療について1種類、第二種再生医療2種類、計3種類の再生医療等提供計画の認可を得て、認定再生医療等委員会を通じて定期的に厚生労働省へ治療報告を行っています(計画番号PC3180111<第三種再生医療>/PB3180012・PB3180086<第二種再生医療>)。
詳細は厚生労働省の下記サイトをご参照ください。
自己多血小板血漿(PRP : Platelet-Rich Plasma)・自己タンパク質溶液(APS:Autologous Protein Solution)療法とは?
血液中の血小板や血漿内には、組織修復を促進する様々な成長因子、炎症を抑える働きなどを持つサイトカイン、糖蛋白、接着分子、蛋白分解酵素などの生理活性物質が多く含まれています。ご自身の血液を採取し、遠心分離機と特殊な閉鎖式精製キットを使用して、血小板を濃縮した血漿 (PRP) を作製し、これを患部に注射する治療法が自己PRP注入療法です。これら様々な分子が患部の細胞に働きかけ、人の本来持っている治癒能力や組織修復能力、再生能力を引き出して組織再生や創傷治癒を促したり、抗炎症作用を発揮したりすることで、痛みが取り除かれていくと考えられています。
海外では、すでに10年以上の実績があり、早期復帰が必要なプロアスリートや、重要な試合を控えたトップアスリート、テニスやゴルフ、ジョギングの愛好家の方などを対象に、広く行われています。最近では、ヤンキースの田中将大投手やエンゼルスの大谷翔平投手が右肘の靱帯損傷に対して本治療を受けたことで脚光を浴びました。
筋・腱・靱帯注入用精製キット
自己PRP注入療法により、テニス肘、またはゴルフ肘と呼ばれる肘内側・外側上顆炎、ジャンパー膝と呼ばれる膝蓋腱炎、アキレス腱炎、足底腱膜炎などの腱付着部症や、肉離れ、筋・腱断裂、靱帯損傷などのケガをより早期に治癒させる確率を高め、慢性化した腱や靱帯由来の痛みを軽減する効果が見込まれます。変形性関節症に対しては、関節滑膜の炎症を抑え、内在性ヒアルロン酸分泌を促進し、関節内サイトカイン濃度を修復するなど関節内における生体恒常性が制御されることで除痛効果が発揮されると考えられています。APSは従来の高白血球PRPを脱水・濃縮し抗炎症作用を増幅させた高濃度な次世代PRPで、強い消炎効果や長期間の持続効果が期待されています。関節内で炎症を引き起こす炎症性サイトカインと言われるタンパク質の活動を阻害することで、炎症を抑え、痛みを軽減するとされています。
PRP療法・APS療法は、日本ではまだ保険診療の対象外のため、自費診療扱いとなります。
まずは本治療の適応であるかを診断するために、一度通常の受診をしていただきます。治療の適応がある場合には、治療日を決めて予約します。
主な適応疾患
- 上腕骨外側上顆炎(テニス肘)
- 上腕骨内側上顆炎(ゴルフ肘)
- 膝蓋腱炎(ジャンパー膝)
- 足底腱膜炎
- アキレス腱障害(アキレス腱炎・腱周囲炎)
- 肉離れ(筋不全断裂)
- 肘・膝・足関節靭帯損傷
- 手関節TFCC損傷
- 変形性関節症(変形性膝関節症、股関節症、足関節症など)
- 膝半月板損傷
- 肩腱板損傷
- 難治性骨折
治療効果および他の治療との比較について
本療法に関しては、上述の通り整形外科領域ではアスリートを中心に国内外で普及していますが、まだ十分なエビデンス(医学的根拠)が確立されているとは言えず、現時点では臨床経験則に基づいた治療と言えます。個人の自然治癒力を利用しているため、治療効果に部位差や個人差があり、治療効果を保証するものではない旨をあらかじめご了承ください。病態によっては複数回の治療が必要となります。とくに変形性関節症に対する治療については、病態や痛みを生じるメカニズムは個々に異なり単一なものではないため、それ単独で治療を完結できるものではなく、多くの場合は運動器リハビリテーションなどの他の治療法との併用も必要となります。ただし、ステロイド等の薬剤を使用せず、ご自身の血液のみを用いた治療であるため、安全性が高く大きな副作用は生じ得ないという点で、他の治療による難治例や手術療法をできる限り回避したい場合には検討の価値がある治療法と言えます。一般には2~3回前後の治療を受けられる方が多いですが、病態に応じて治療間隔を決め、治療効果を確認しながら次の来院日を決めていきます。
昨今、世界中に数多くのPRP作製キットが流通しており、精製されるPRPの組成は製品間で必ずしも同一ではありません。白血球が多く含まれたPRP(高白血球PRP)、白血球の少ないPRP、その他、治療に際していずれのPRPを用いるべきかは議論の多いところです。本邦で臨床使用可能な厚生労働省認可の高度医療管理機器(クラスIII)として認められているPRP作製キットは現在4製品ありますが、その多くが高白血球PRPです。高白血球PRPは様々な優れた作用をもつ反面、正常な軟骨に影響を与える可能性が実験レベルでは示唆されていますが、臨床レベルで証明されたわけではなく、患者さん個々により病態は異なりその多くは単一なものではないため臨床所見や画像所見だけでクリアカットに使い分けるのは困難です。 私どものような小さなクリニックにとって大切なのは信頼性の高いキットを用いてできるだけ簡便で安全性の高い治療を行うこと、また1人でも多くの患者さんが痛みから解放されるよう価格面でのハードルを可能な限り下げることと考えています。当院では関節内投与となる第二種再生医療に関しては、安全性を最優先し、上述の厚生労働省認可の高度医療管理機器(クラスIII)製品をバッフィーコートと呼ばれる遠心分離後の血小板・白血球層の量を微調整して使用しています。また筋・腱・靱帯への投与となる第三種再生医療に関しては、スポーツ選手や学生の患者さんが治療を受けやすいように、安全性と低価格性とを両立させた、欧州ISO 13485/CE Mark Class IIa取得、米国FDA認可のPRP作製キットを使用しています。
次世代型PRPと表されるAPS(Autologous Protein Solution:自己タンパク質溶液)療法も当院で提供が可能です。APSは前述のように従来の高白血球PRPを脱水・濃縮し抗炎症作用を増幅させた高濃度PRPで、強い消炎効果や長期間の持続効果が期待されています。関節内で炎症を引き起こす炎症性サイトカインと言われるタンパク質の活動を阻害し、炎症バランスを改善することで痛みを軽減し、軟骨の変性や破壊を抑えようとする治療です。APSは欧米でのデータから単回投与での効果持続性が期待できます。しかし、PRP同様すべての方に効果を確実に保証できるものではなく、作製キットそのものが非常に高価なのが現状です。従来型PRPで効果が得られる方はPRPベースのAPS治療にも同様な効果を示すであろうことは容易に想像がつきます。費用対効果に不安を抱かれる方には、まずはPRP治療で効果を試してみてからAPS治療を行うのも一法です。PRPでは効果が得られない重度の関節症の方をAPS治療で救うことができれば、1人でも多くの方が手術を受けることなく痛みから解放されればと願っていますが、それには今後各医療施設のデータの蓄積や研究が必要であり、その成果が待たれます。
治療の流れ
1.患者さんの腕から血液を採取(部位により10~55ml程度)
2.採取した血液をPRP/APS作製キットに注入し、遠心分離作業ののち、血小板が多く含まれたPRP/APSを抽出
3.PRP/APSを患部に注入
※採血から注入まで、来院当日に約1時間程度で提供可能です。
安全性と注意点について
- PRP/APSは、ご自身の血液から清潔操作によりその場で作製し、その後直ちに注入するので、ウイルス感染の危険性やアレルギー反応を起こすこともなく、安全です。
- 一般的な採血手技に伴う、アルコール消毒による皮膚のかぶれ、血管・神経損傷、血管迷走神経反射による気分不快などはごくまれに起きる場合があります。
- 注入部位からの感染を防ぐためにも、注射当日の入浴や患部のマッサージ、喫煙、飲酒、激しい運動は控えてください。翌日以降は通常通りの日常生活を送っていただいて構いません。ただし、治療の部位や病態によっては1週間程度運動を控えた方がよい場合があります。
- PRP/APSの注入には25~30Gと呼ばれる細い注射針を使用しますが、肘の腱・靱帯付着部など部位によっては強い痛みを伴うことがあります。
- 治療後3~4日間は、細胞の活発な代謝が起こり、軽度の炎症を伴うため、痛みや腫れを生じることがありますが、徐々に軽減していきます。
料金について
自己PRP/APS注入療法料金
筋・腱・靱帯への注入(第三種再生医療等技術)
- PRP注射1単位:採血10ml / PRP 1ml 20,000円(税込み 22,000円)
- PRP注射2単位:採血20ml / PRP 2ml 40,000円(税込み 44,000円)
関節腔内への注入(第二種再生医療等技術)
- PRP注射1関節:採血30-32ml / PRP 4ml 80,000円(税込み 88,000 円)
- APS(次世代型高濃度PRP)注射1関節:採血55ml / APS 2.5ml 320,000円(税込み 35,2000円)
*各種クレジットカード、PayPay、Alipayの利用が可能です。- *料金には診察料、採血・注射施術料、PRP/APS精製技術料、精製キット他諸材料費が含まれます。
- *初診日の当日治療は原則行っておりませんが、他の医療機関からの事前の診療情報提供と予約がなされ、即日PRP/APS治療を受ける場合には初診料として別途3,500円(税込み 3,850円、画像診断料や超音波検査診断料を含む)を加算させていただきます。
- *治療の部位、対象組織や病態により(再生医療の区分分けがなされ)PRPの必要量と使用する精製キットが異なります。詳細はおたずねください。
治療実績・成績
院長が在籍していた東京慈恵会医科大学整形外科の関連病院では、これまで、関節内病変のない肘外側上顆炎・肘内側上顆炎(テニス肘、ゴルフ肘)、足底腱膜炎、膝蓋腱付着部症(ジャンパー膝)、大腿内側広筋腱付着部症、アキレス腱付着部症・腱症、陳旧性アキレス腱部分断裂、陳旧性大腿直筋腱部分断裂、陳旧性膝内側側副靱帯部分損傷、陳旧性足関節靱帯部分損傷、シンスプリント、肩関節肩峰下滑液包炎などに対し、当院と同一の作製キットを用いたPRP治療が行われました。
治療効果としては、2回から3回の注射で、痛みは消失・軽減しており、MRIなどの画像検査でも、患部が修復したことが確認されています。
当院では2015年11月以降、2023年12月31日現在、筋・腱・靱帯への第三種再生医療等技術としては上腕骨内外側上顆炎(テニス肘・ゴルフ肘)、肘関節内側側副靱帯損傷(野球肘)、アキレス腱炎、膝蓋腱炎、股関節内転筋損傷をはじめとする肉離れ・筋断裂など、のべ460部位に、関節腔内への第二種再生医療等技術として変形性膝・股・足関節症、肩腱板損傷などのべ2255関節に対してPRP治療を行いました。有害事象として厚生労働省に報告した例は1例もなく、PRP治療の安全性の高さが確認されております。疾患別治療件数の内訳は以下の通りです。
第三種再生医療等技術によるPRP治療(2015.11-2023.12) 疾患別のべ件数
上腕骨内外上顆炎 | 266 |
---|---|
肘内外側側副靱帯損傷 | 40 |
アキレス腱炎 | 35 |
膝蓋腱炎・四頭筋総腱炎 | 33 |
各種肉離れ、筋断裂 | 20 |
足底腱膜炎 | 11 |
膝鵞足炎 | 6 |
手関節TFCC損傷 | 17 |
足後脛骨・腓骨筋腱炎 | 6 |
膝内側側副靱帯損傷 | 6 |
足前距腓靱帯損傷 | 4 |
その他 | 16 |
合計 | 460 |
第二種再生医療等技術によるPRP/APS治療(2018.7-2023.12) 疾患別のべ件数
変形性膝関節症 | 1823 (うちAPS 41) |
---|---|
変形性股関節症 | 128 (うちAPS 1) |
変形性足関節症 | 52 (うちAPS 1) |
変形性肘関節症 | 41 (うちAPS 1) |
その他の変形性関節症 | 54 |
肩腱板損傷 | 124 (うちAPS 1) |
膝半月板損傷 | 29 |
股関節唇損傷 | 4 |
合計 | 2255 (うちAPS 45) |
幹細胞培養上清液(SC-CM)療法
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